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著者は昭和22年生まれ、上山市を拠点に研究を重ねた。岩手大学大学院博士課程を中退。歴史地理学会、日本民俗学会や置賜民俗学会会員として活動した。これまで『羽州国境「金山峠」の落陽』、『石造念仏車〈後生車〉の民俗』、『羽前の結界石と庚申異形塔』などの著書がある。
月夜燈は、石材を使用して作った照明具である。寺院や神社の境内などでよく見かけるが、実際に照明器具として月夜燈のお世話になることはない。寺院や神社に多いのは、商人や檀家などが商売や信仰の証として奉納したからで、個人の家におかれる場合は、その家の隆盛を誇示したいという思いもあるようだ。飛鳥時代の遺品に、石燈籠が発掘されたという。
本書は著者が何十年にもわたって丹念に現地に行って撮影し、文字を読み上げた労作である。置賜にこれほどの月夜燈があると知って、改めて驚いた。今度、月夜燈を見たときには、今までと違った見方となるにちがいない。
著者は、月夜燈に興味を持ち始めたのは埼玉県入間市に住んでいた昭和48年頃としている。入間東部地域の板碑と石仏調査を行い、ガリ版刷りの小冊子を発行し、それが日本石仏協会で話題になった。郷里に戻ってからも石燈籠を含む石造物の調査を行い研究を発表した。
本書は、学術的なものではなく、将来の研究に役立てばと考え、紀年銘文と形態を主に、画像での記録に留めておきたいと考えまとめたと述べているが、内容は極めて体系的、網羅的である。まず石燈籠の構成、造立目的を分類し、山形県内や置賜地方にある石燈籠の設置場所、建立年、建立者、燈籠の名称などが写真付きで掲載されている。気づくのは、一つとして同じ形のものはないということ。
最後に、米沢と弘前の雪燈籠まつりについて紹介。米沢の雪燈籠まつりは、昭和52年、小島彌左衛門氏が実行委員長となり、太平洋戦争戦没者の霊を慰める鎮魂塔を雪で造って献灯したことに始まる。江戸期から造立されてきた櫓型の石燈籠に真似て制作され、米沢の冬の風物詩となっている。現地調査の労力を考えると、その地道な研究を多としたい。著者は多くの業績を残し、一昨年逝去された。(評者 米沢日報デジタル/成澤礼夫)
著 者 加藤和徳
発行所 蓬莱波形山文庫
発行日 令和2年7月1日